The DAO事件について、時系列で何が起きたか分かるようにまとめました。
ビットコインのハードフォーク危機を語る際に引き合いに出されることが多いThe DAO事件ですが、自分はこの事件を機に暗号通貨により興味を持つようになりました。まるで映画や小説の世界をリアルタイムで見ているようでした。
常に事件が起こっている暗号通貨界のなかでも、かなり大きくてかなりおもしろい事件だと思います。
ざっくり
Etherium プラットフォーム上のプロジェクトとして、1.5億ドル以上を集めたThe DAOは自身のバグにより、3分の1の資金を攻撃者に奪われました。
奪われた資金を取り戻すため、Etherium コミュニティはハードフォークによりこの攻撃をなかったことにする提案をします。
この提案に対して批判があがったり、攻撃者が自身に協力する者への報酬を発表するなど、ごたごたがある中でハードフォークが実行されました。
しかしその後、消滅すると思われていた元のEtherium ブロックチェーンのハッシュパワーがだんだん大きくなり、Etherium Classic として生き残ります。
現在も取引所でETH(Etherium)と並んで、ETC(Etherium Classic)として取引され、開発もされています。
2016
05/01 The DAOのICO開始
28日間のセールで1.5億ドル以上のETHを集め、それまでのICO(Initial Coin Offering)で最大の資金調達となりました。
06/09 The DAOコードのバグが指摘される
あるブログでThe DAOの送金機能のバグが指摘されました。この指摘に対して開発者は、現時点で資金を危険にさらすものではなく、問題ないとの見解を示しました。
06/17 The DAOからの資金流出
送金機能のバグと分割機能を使いDAOプールから3,641,694ETH(5000万ドル)が抜き出されました。
分割機能を使って資金を移動した場合、27日間ETHの移動ができないため、07/14までになんらかの対応を実施しなければならない状況となりました。
Etheriumコミュニティが検討した対策は、
- まずソフトフォークにより、攻撃者が移動させたETHアドレスを凍結し、
- さらにハードフォークにより、攻撃が起こる前の状態に戻して、資金移動がなかったことにする
というものでした。
この対策は、過半数のノードが賛成すれば実行可能ですが、不可逆なプログラムを実行し、誰にも止められないWould computerであったはずのEtherium がVitalik(Etheriumの考案者)の判断でこのような対応をとることに批判もあがりました。
これに対して、攻撃者がThe DAOコミュニティのslack(メッセージツール)で「フォークに反対したノードに100万ETHと100BTC払う」と発言し対抗しました。
また、残りのETHを守るために、ホワイトハッカーが攻撃者と同じ方法で残りの資金を移動しました。
06/28 ソフトフォークにバグが発見される
ソフトフォークによりDoS攻撃に対する新たな脆弱性が増えてしまうということがわかり、06/30に予定されていたソフトフォーク実行の可能性が低くなりました。
07/20 Etherium のハードフォーク実行
投票によりETHホルダーの89%から承認され、ハードフォークが実行されました。
これによりEtherium のブロックチェーンがEtherium(ロールバックで攻撃をなかったことにしたブロックチェーン)とEtherium Classic(ロールバックしないブロックチェーン)に分岐しました。
その時点のETHホルダーはETHとETCを保有することになりました。
ETH上で取り戻された資金は、The DAOトークン保持者に返されました。
07/24 PoloniexがETCの扱いを開始
ビットコイン取引所であるPloniexがETCの取扱いを開始しました。
これを受けて、ETCに対して51%攻撃を仕掛けるというEtherium マイニングプールが現れました。
しかし、他の取引所でも取扱いがおこなわれ、Etherium Classic のマイニングを行うと発表するマイニングプールも出現し、ETCの時価総額は8位となりました。
ETHとETCの合計時価総額は分岐前のETHの時価総額を超えました。
また、ハードフォーク時点でETHを取引所に置いていた場合に、取引所によってはユーザーのETCが消えてしまうという例や、リプレイアタックへの脆弱性によりETCを失う取引所などが発生しました。
08/10 ホワイトハッカーがETCを取引所に移動させる
攻撃者から守るためにホワイトハッカーが移動させた資金はETCとして残っていましたが、このうち3,000,000ETCがいくつかの取引所に移動されました。
The DAO トークン保持者に直接返還するべきだとの批判に対して、ホワイトハッカーは公平に返還するのが難しい、51%攻撃のリスクがあるなどの理由のより、ETCからETHに替えて返還するつもりだったと説明しました。
しかし、コストがかかり複雑であることがわかったため、ETCで返還する方針に変更し、ETCの返還用スマートコントラクトを開発・公開しました。
2017
04/14 ホワイトハッカーがETCの払戻し終了を延期
04/15に予定されていたETCの返還期限を2018/01/10まで延期すると発表しました。
期限のおよそ1週間前になっても170万ETCが残っており、返還要求されずに残ったETCが期限後にホワイトハッカーの管理下になることについて批判の声があがっていました。
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